オブジェクト指向とは?
オブジェクト指向とは、プログラミングの考え方や設計手法の1つで、ソフトウェアをオブジェクトという単位に分けて構築する方法です。オブジェクトは、データ(プロパティや属性と、そのデータに対する操作(メソッドや動作)をまとめたものです。
オブジェクト指向の基本要素
1.クラス
クラスは、オブジェクトを作成するための設計図のようなものです。この設計図には、作成される「モノ」の属性(プロパティ)やメソッド(機能)が含まれています。たとえば、自動車を例にとると、クラスには自動車が持つべき機能(走る、止まる、曲がるなど)や属性(車体の大きさ、燃費などのスペック)が定義されています。設計図がなければ具体的な自動車を製造できないのと同様に、クラスがなければオブジェクトを生成できません。
2.オブジェクト
オブジェクトは、クラスをもとに生成された具体的な実体です。クラスで定義された属性やメソッドを持つ、具体的な存在を指します。例えば、「Person」というクラスがあるとき、そのクラスから生成された「Alice」や「Bob」などがオブジェクトに該当します。オブジェクトはクラスの仕様に基づいて生成され、独自のデータを保持します。
3.インスタンス
インスタンスは、クラス(設計図)をもとに実体化されたオブジェクトのことです。自動車の例で言えば、クラス(設計図)をもとに製造された具体的な自動車がインスタンスとなります。そして、クラスをもとにインスタンスを作成することをインスタンス化と呼びます。インスタンス化により、プログラム内でクラスの具体的な実体を操作できるようになります。
オブジェクトとインスタンスの違い
- オブジェクト: クラスから生成された実体全般を指します。クラスの属性やメソッドを持つ具体的な存在です。
- インスタンス: クラスから生成された特定のオブジェクトを指します。インスタンス化されたオブジェクトの一つ一つを指す際に使われます。
一般的には、「オブジェクト」と「インスタンス」はほぼ同義で使われますが、インスタンスという言葉は特に「クラスから生成された具体的なオブジェクト」という意味合いで使用されます。
オブジェクト指向の三原則
1.継承
継承とは、あるクラス(親クラス)のメソッドやプロパティを、別のクラス(子クラス)が受け継ぐことです。これにより、親クラスで定義された機能を子クラスで再利用でき、コードの重複を避けることができます。
具体例
動物という親クラスを継承した犬クラスがあるとします。この場合、犬クラスは動物クラスのメソッド(例:食べる()メソッド)を受け継ぎつつ、吠える()といった独自のメソッドを追加できます。
2.ポリモーフィズム
ポリモーフィズムとは、同じメソッドに対して異なるクラスがそれぞれ異なる動作をすることを指します。つまり、同じメソッド名でありながら、異なるオブジェクトによって実行される内容が変わるということです。
具体例
動物クラスに鳴く()メソッドがあり、犬クラスと猫クラスがそれぞれ吠えると鳴く動作を行う場合、鳴く()メソッドを呼び出すと犬は「ワン」と鳴き、猫は「ニャー」と鳴きます。これがポリモーフィズムの一例です。
3.カプセル化
カプセル化は、オブジェクト内部の情報や機能を隠し、外部から直接アクセスできないようにすることです。これにより、データが勝手に変更されるのを防ぎ、オブジェクトが正しい状態を保つようにします。
具体例
自動販売機を考えてみましょう。自動販売機にはたくさんの飲み物が入っていますが、ユーザーは自動販売機の内部に手を突っ込んで直接飲み物を取り出すことはできません。代わりに、ユーザーはお金を入れてボタンを押すことで飲み物を取り出します。ここで、自動販売機の内部の仕組みや飲み物のストックは外から見えませんが、ボタンを押すという方法で飲み物を選ぶことができます。これがカプセル化の一例です。外部からは限られた方法でしかアクセスできず、その内部の動作は外部からは隠されています。
オブジェクト指向のメリット
1.コードの再利用性
クラスやメソッドを再利用できるため、同じ機能を複数書く必要がなくなります。継承やポリモーフィズムを活用することで、共通の処理を親クラスにまとめ、子クラスで必要な部分だけ追加・変更をすることができます。
2.柔軟性・多態性
ポリモーフィズムにより、同じインターフェースやメソッドを使って異なる動作を実現できます。抽象化を通じて、具体的な実装に依存しない柔軟なコードが書けます。
オブジェクト指向のデメリット
1.学習コストが高い
OOPの概念(カプセル化、継承、ポリモーフィズム、抽象化)を理解し、正しく設計するには時間と経験が必要です。特に初心者には抽象的な概念が難しく感じられることが多いです。
まとめ
オブジェクト指向は大規模なプロジェクトや長期間のメンテナンスが必要なシステムにとって非常に強力な設計手法です。再利用性や保守性の向上など、多くのメリットがありますが、同時に学習コストやパフォーマンスの問題も考慮する必要があります。システムの規模や要件に応じて、適切にオブジェクト指向を使いこなすことが重要です。